自立援助ホームについてもっと知りたい



●自立援助ホームのあゆみ

 自立援助ホームは、戦後しばらくして、戦災孤児の中学卒業後の自立支援対策として始まりました。1953年、神奈川県が「霞台青年寮」を設立したのがその始まりです。その後、養護施設出身者のアフターケアを目的に、新宿寮(青少年福祉センター)が青少年アフターケアセンターとして設立されました。そして義務教育終了後の支援が十分でない若者たちに社会的な支援が必要と感じた関係者の善意の活動により、少しずつホームが増えていきました。

 そうした養護施設の退所者支援として行ってきたボランティア的な取り組みを、東京都は1974年、アフターケア事業と認め、補助金の交付を始めました。その10年後の1984年、東京都はそうした取り組みを自立援助ホーム事業として制度的に位置づけ、制度実施要綱の中で「自立援助ホーム」と命名し、全国的にも自立援助ホームと呼ぶようになりました。

 1998年に法改正により、自立援助ホームは児童福祉法第二種社会福祉事業(注1)として位置づけられ、2009年には、その対象年齢が20歳まで引き上げられるとともに、児童保護措置費制度に組込まれ、より公的な支援をうけられるようになりました。 また就学者自立生活援助事業と社会的養護自立支援事業という2つの事業が新設され、2017年より自立援助ホームに入居できる期間が、22歳(注2)の誕生日の年の年度末までに引き上げられました(注3)。

注1)児童福祉法第6条の3、児童福祉法第33条の6「児童自立生活援助事業」として第2種社会福祉事業に位置付けられている。
注2)20歳の誕生日前日までに入居した者に限る
注3)ただし、自治体によってはその二つの事業を行わないこともありますので、確認が必要。


●どこから来るのか

 下にリンクしている厚労省の2018年の調査によると、自立援助ホームに入居する子は、43.4%が家庭から、36.4%が児童福祉施設等からです。

 またその理由については、一般的に「虐待」とされる「放任・怠だ」「虐待・酷使」「棄児」「養育拒否」を合計すると、自立援助ホームは 45.5%(前回 35.6%)となっており、半数近い子がいわゆる「虐待」を経験して自立援助ホームにやってきます。

→厚生労働省「児童養護施設入所児童等調査の概要」(平成 30 年 2 月 1 日現在)


●援助方法

 ホームに来る子どもたちの多くは被虐待の子どもたちであり、ネグレクトされた子どもたちです。心の奥底に人間不信を、大人への不信を抱えた子どもたちが、施設での集団生活にはなかなか適応できずにそのまま社会に飛び出て失敗し、ホームにやってきます。

 こうした子どもたちの受入れが、場としても、支援の方法としてもほとんどないというのが現状です。この子どもたちに必要なのは指導でも、お世話でも、管理でもありません。

 自立援助ホームでは、先ずはそのままの姿(何もやろうとしない、意欲をもてない、良いとは言えない目標しかもてないといろいろありますが)を認め、受け入れることから始まります。そして、やる気になるのを、意欲的になるのを、ある程度認識し、目標がもてるようになるのを待ちます。何度かは失敗するであろうことを予測しながらも、彼らが選び、決断するまで待ちます。そして、彼らが決断したことを尊重します。私たちには良くないな、上手くいかないなと解っていても彼らが決断したことを尊重します。

 当然、上手くいかないことや、躓くことがでてきます。しかし、人は失敗したり誤った体験をしながら成長していきます。その権利は彼らにもあるのです。そのことがキチッと保障されていることが大切です。ありのままを認め、本人の主体性が生じるのを待ち、出てきた決断を尊重し、失敗することを保障する、というのは「主体性の保障」です。

 自立援助ホームは「自立」を「子どもたちが何でも一人でできるようになること」とは捉えていません。「自分でやろうとすること」「自分でやろうという意欲をもちながら人と関わって、人に助けを求めていけるようになること」と考えます。そのためには、この「主体性の保障」は不可欠な援助方法です。 心の奥底に人間不信を、大人への不信を深く抱えた子どもたちにとっては、在りのままの自分を無条件で受け入れてくれる大人に出会うこと、数少ない経験からでてくる主体性の小さな芽がどんなに稚拙であっても踏みにじらずに育ててくれる大人に出会うことが大切なのです。

  自分では自分自身をなかなか抑制できないところまでいってしまっている子どもたちも多くいます。夜遊びがしたくて帰ってこない子、寂しさに耐え切れず異性との繋がりを強く求める子、非行をして再び家庭裁判所に繋がってしまう子、少年院に入ってしまう子といろいろですが、それでもなお、彼らが選び決断した結果なら援助を続けます。彼らから関係を断ち切らない限り、ホームを出た後、何年でも援助が続きます。


全国自立援助ホーム協議会HPより引用